『カラフル』本のあらすじ・書評_若さの価値と押しつけ

『カラフル』あらすじ

生前の罪により輪廻のサイクルから外されたぼくの魂が天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年。真(まこと)の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになる……。

出典:森絵都『カラフル』文藝春秋,表紙カバー裏

『カラフル』書評

1.本人の気持ちのその事実

『カラフル』を読み、自分ではない一人の人、真(主人公の少年)の人生を辿って、自分ではない人の思っていることや大切にしていることを知った。

本文に次のような文がある。

それだけ髪型を気にしていても、クラス全体から見ればぼくらはふたりとも、確実にイケてないほうの組に属するわけだけど、それでも、ぼくはもうみじめではなかった。

みじめというのは。昼休みをひとりですごしたり、移動教室までひとりで歩かなければならないことをいう。(p141)

昼休みをひとりですごすことも、移動教室をひとりで歩くことも、みじめなことではない。だけど、「真は、みじめな気持ちになる」といっているのだから、真はみじめな気持ちになっている。

関係のない第三者がみじめに思うかどうか、ではなく、本人がみじめに思っている。

本人の気持ちのその事実を感じた。

2.若さの価値と押しつけ

主人公である小林真の初恋の相手「桑原ひろか」は、中年の男とお金をもらうかわりにエッチをする愛人関係を結んでいる。

真とひろかとの会話のなかで、ひろかは言う。

「ひろかもいっしょだよ。きれいな服も、バッグも指輪も、ひろかは今ほしいの。大人になってからほしいなんて思ったことないの。どうせひろかの体なんておばさんになったらもう価値なくなっちゃうんだし、価値なくなってからきれいなもの買ってもしょうがないもん。エプロンやババシャツの似合う年齢になったら、ひろかはおとなしく、エプロンやババシャツを着るよ」(p88)

このひろかの言う「価値」は、本当にひろかにとっての価値なのだろうか。

私には、より若い身体に価値をおく男が女をみる視線からした「価値」のように思える。(すべての男性がそうというわけではない)

私たちの周りでは、こうあるべきという押しつけがさまざまな場所に潜んでいる。

例えば、「これでマイナス5才若見えっ」といったフレーズで化粧品が売られていたり、「そのシミみられてるかも」と煽ったCMが放送されていたり。

ひろかは、そういうものの影響で「より若い身体に価値をおく男が女をみる視線」を自分のなかに知らず知らずのうちに取り込んだ(内面化した)のだと思う。

ひろかは、より若い身体に価値をおく男が女を品定めする(舌舐めずりという言葉がぴったり)ことの気持ち悪さに、気づいているだろうか?

(こういったテーマに興味がある方は、DRESS[ドレス]というwebメディアの『「おばさん」は蔑称か』という記事もおすすめです。)